- 公開日:2026.07.24
- 最終更新日:2026.07.24
介護や葬儀を終えて財産を引き継いだところ、突然「遺留分侵害額請求」をされた、というご
相談があります。もっとも、請求をされたからといって、相手の言い分どおりの金額をそのま
ま支払わなければならないとは限りません。この記事では、遺留分侵害額請求をされた側の立
場から、まず確認すべき 3 つのポイントと、その後の対処の手順について解説します。
目次
「遺留分侵害額請求」とは
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に対して法律上最低限保障された、遺産に対する取り
分のことです(民法 1042 条)。亡くなった方(被相続人)は、遺言や生前贈与によって自分の
財産を自由に処分できるのが原則です。しかし、その結果として遺留分に満たない財産しか受
け取れなかった相続人は、遺言や贈与によって財産を多く受け取った人に対し、遺留分を侵害
された額に相当する金銭の支払いを請求することができます(民法 1046 条)。これが遺留分侵
害額請求です。
この制度は、かつては「遺留分減殺請求」と呼ばれ、不動産の持分など現物の返還を求めるも
のでした。しかし、2019 年 7 月 1 日に施行された相続法の改正により、金銭の支払いを請求す
る制度へと改められました。そのため、改正後に開始した相続では、請求を受けた側は原則と
して金銭で解決することになります。不動産そのものの共有を強いられることがなくなった一
方で、まとまった金銭の支払いを求められる点が、請求を受けた側にとっての大きな特徴とい
えます。
遺留分侵害額請求をされた場合に確認すべき 3 つのポイント
遺留分侵害額請求を受けた場合、支払いの要否や金額を検討する前提として、まず次の 3 つのポ
イントを確認する必要があります。
時効を過ぎていないか
遺留分侵害額請求権には期間の制限があります。具体的には、①遺留分権利者が「相続の開
始」および「遺留分を侵害する贈与・遺贈があったこと」を知った時から 1 年、②相続開始の
時から 10 年のいずれかが経過すると、請求権は行使できなくなります(民法 1048 条)。そこ
で、相手方がいつ相続の開始や遺言の内容を知ったのか、請求の意思表示(内容証明郵便な
ど)がいつ届いたのかを確認することが重要です。
請求してきた人に権利はあるか
遺留分が認められるのは、配偶者、子(子が先に亡くなっている場合はその代襲相続人)、お
よび直系尊属(父母・祖父母)に限られます。被相続人の兄弟姉妹は相続人にはなりえます
が、遺留分はありません(民法 1042 条 1 項)。そのため、兄弟姉妹やその子(甥・姪)からの
請求であれば、そもそも権利がないことになります。
また、相続欠格に該当する人、廃除された人、相続放棄をした人のほか、家庭裁判所の許可を
得て相続開始前に遺留分を放棄した人(民法 1049 条)にも遺留分はありません。請求者が本当
に遺留分権利者にあたるのかを、戸籍などの資料で確認することが検討の出発点になります。
請求されている「金額」は正しいか
遺留分侵害額は、おおまかにいうと、①遺留分を算定するための財産の価額(相続開始時に有
した財産+一定の生前贈与-債務)を確定し、②これに遺留分の割合(原則 2 分の 1、直系尊属
のみが相続人である場合は 3 分の 1)と請求者の法定相続分を乗じて請求者の遺留分額を算出
し、③そこから請求者が遺贈や特別受益として受け取った財産、相続によって取得する財産な
どを差し引いて計算します(民法 1042 条~1046 条)。
実務上、争いになりやすいのは次のような点です。まず、加算される生前贈与の範囲です。相
続人に対する特別受益にあたる贈与は原則として相続開始前 10 年以内のもの、相続人以外の第
三者に対する贈与は原則として相続開始前 1 年以内のものに限られます(民法 1044 条)。次
に、不動産や非上場株式など、評価方法によって金額が大きく変わる財産の評価額です。さら
に、被相続人の債務の控除漏れもよく見られます。相手方の計算は、不動産を高めに評価して
いたり、本来加算されない贈与まで含めていたりすることがあり、資料に基づいて検証するこ
とで金額が大きく変わるケースは珍しくありません。
請求された後の対処手順
遺留分侵害額請求を受けた後は、一般的に次のような流れで対応を進めます。
⑴ 請求内容の確認:内容証明郵便などの記載から、請求の根拠、対象とされている財産、金
額の計算過程を確認します。文書に回答期限が記載されていることがありますが、その期限自
体に法的な拘束力があるわけではありません。もっとも、対応しないまま放置すると、調停な
どに移行し、解決までの時間や負担がかえって大きくなるおそれがあります。
⑵ 資料の収集と検証:遺言書、贈与に関する資料、預貯金の取引履歴、不動産の登記事項証
明書や固定資産評価証明書などを集め、遺留分侵害額を自ら計算し直して、請求額が適正かど
うかを検証します。
⑶ 交渉:検証結果を踏まえ、支払額や支払方法(一括払い・分割払いなど)について相手方
と話し合います。
⑷ 調停・訴訟:話し合いがまとまらない場合には、相手方が家庭裁判所に遺留分侵害額の請
求調停を申し立てます。
なお、直ちに金銭を準備することが難しい場合には、裁判所に対し、支払いについて相当の期
限を与えるよう求める制度も設けられています(民法 1047 条 5 項)。
遺留分を請求されたら、弁護士へ相談すべき理由
相手の言い値から適正な金額へ減額できる可能性がある
これまで見てきたとおり、遺留分侵害額の計算には、生前贈与の範囲、不動産などの財産評
価、債務の控除といった専門的な判断を要する論点が多く含まれます。弁護士が資料に基づい
て検証することで、請求額が適正な水準まで減額される可能性があります。他方で、根拠のな
い反論を続けて支払いを遅らせると、遅延損害金が発生・増加するなど、かえって不利益にな
ることもあります。支払うべき部分と争うべき部分を早期に見極めることが、負担を最小限に
抑えるうえで重要です。
支払った・支払っていないの後々のトラブルを防ぐため、法的な合意書を作成できる
交渉がまとまった場合には、支払額、支払方法、支払期限のほか、当事者間にはその合意書に
定めるもののほかに債権債務が存在しないことを相互に確認する条項(清算条項)などを盛り
込んだ合意書を作成しておくことが大切です。合意書を作成しないまま支払いをすると、後に
なって追加の請求を受けたり、支払いの有無や金額そのものが再び争いになったりするおそれ
があります。弁護士が関与することで、法的に有効で、紛争の蒸し返しを防ぐ内容の合意書を
作成することができます。
遺留分侵害額請求のお悩みは寺岡法律事務所へご相談ください
遺留分侵害額請求をされた場合には、時効、請求者の権利の有無、請求金額の妥当性という 3 つ
のポイントを確認したうえで、早い段階で対応方針を立てることが大切です。当事務所では、
請求内容の検証、財産調査や不動産鑑定依頼手続、相手方との交渉、調停対応、合意書の作成
まで、一貫してサポートしています。内容証明郵便が届いてお困りの方、請求された金額が妥
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