- 公開日:2026.07.06
- 最終更新日:2026.07.06
遺言や生前贈与によって取り分が少なくなった相続人は、最低限の取り分である遺留分につ
いて金銭の支払いを求めることができます。当事者間の話し合いで解決できない場合は、家
庭裁判所の調停手続きを利用することになります。本記事では、申立て方法や手続きの流
れ、注意点を弁護士が解説します。
目次
1.話し合いでの解決は可能?
まずは当事者間の協議で解決を目指すのが原則
遺留分侵害額請求は、裁判外で行使することも可能です。まず当事者間で話し合いを行い、
合意による解決を目指すのが原則となります。
遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを
知ったときから 1 年以内に行使しないと、時効によって消滅します(民法第 1048 条)。ま
た、相続開始から 10 年が経過したときも、同様に権利は消滅します。そのため、まずは内
容証明郵便などで遺留分侵害額請求権を行使する意思を伝えて時効の完成を防ぐことが重要
になります。
話し合いで解決できない場合の選択肢
当事者同士の話し合いで合意ができないときや、そもそも協議ができない場合は、家庭裁判
所の「遺留分侵害額の請求調停」を利用することができます。
遺留分侵害額請求事件は、いきなり訴訟を行うことはできず、まずは調停を申し立てる必要
があります(家事事件手続法第 257 条第 1 項)。これを、調停前置主義と言います。
2.遺留分侵害額請求で調停を起こす方法
申立先となる家庭裁判所
遺留分侵害額の請求調停の申立先は、相手方(遺留分を侵害する相続や贈与を受けた人)の
住所地を管轄する家庭裁判所です。
相手方の住所がわからない場合には、住民票の取り寄せなどによって調査をすることになり
ます。
申立てに必要な費用
申立てにかかる主な費用は次のとおりです。
• 収入印紙:1200 円分
• 連絡用の郵便切手(金額は申立先の家庭裁判所により異なります)
郵便切手の金額や内訳は裁判所によって異なるため、申立て前に該当する家庭裁判所のウェ
ブサイトや窓口で確認するようにしましょう。
申立てに必要な書類
遺留分侵害額の請求調停を申し立てる際には、次のような書類が必要となります。
相続関係などによって変化することがあるので詳しくはご相談ください。
• 申立書及びその写し(相手方の数の通数)
• 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
• 相続人全員の戸籍謄本
• 遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し
• 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書,固定資産評価証明書,預貯金通帳の
写し又は残高証明書,有価証券写し,債務の額に関する資料等)
• 被相続人の子で死亡している人がいる場合、その人の出生時から死亡時までのすべ
ての戸籍類
3.調停になった場合の流れ
ステップ1:申立書の提出と期日の指定
家庭裁判所に申立書を提出すると、書類審査を経て、裁判所との間で第 1 回の調停期日を
調整します。指定された日時は、家庭裁判所から相手方に対して書面で通知されます。
ステップ2:調停期日での話し合い
調停期日では、家庭裁判所の調停室で、裁判官 1 名と調停委員 2 名で構成される調停委員
会が間に入って話し合いが進められます。裁判官が調停室に入ることはまれであり、主に調
停委員が進行することになります。
当事者同士が直接顔を合わせて議論するのではなく、それぞれが入れ替わりで調停室に入
り、調停委員と個別に面談することになります。期日毎に各当事者につきそれぞれ 30 分程
度の面談を 2 回ほど行い、所要時間は 2 時間前後になることが多いです。調停は、1 か月か
ら 1 か月半に 1 回程度のペースで開かれます。合意の見込みがある限り複数回の調停期日
が開かれますので、解決までに半年から 1 年以上かかるケースも珍しくありません。
ステップ3:調停の成立または不成立
調停案について双方が合意できれば、調停成立となり、調停調書が作成されます。調停調書
は確定判決と同一の効力を持ち、相手方が支払いに応じない場合には強制執行の手続きに移
ることもできます。裁判所が作成するとはいえ、調停調書の文言によっては強制執行に支障
が生じることがあるため、内容は十分に確認する必要があります。
一方、双方の主張に大きな隔たりがあり、合意の見込みがないと判断された場合や、相手方
が出席しない場合には、調停不成立となります。
ステップ4:不成立後は訴訟へ
遺留分侵害額請求の調停が不成立になっても、自動的に審判手続きへ移行することはありま
せん。このため、改めて「遺留分侵害額請求訴訟」を提起することになります。
4.調停になった場合は専門家への相談は必須?
本人で進めることもできるが負担が大きい
遺留分侵害額の請求調停は、法的には弁護士に依頼せずに本人だけで進めることも可能で
す。
遺留分侵害額の計算には、相続人の調査、相続財産の範囲の確定、不動産などの評価、特別
受益や寄与分の取扱い、生前贈与の評価額の確定などが必要になります。これらを整理して
調停委員に説明したり、資料を適切に提出するためには、十分な法的知識が必要であり、作
業負担も大きくなります。これらを実施するためには専門家への依頼は必須ということにな
ります。
相手方が弁護士に依頼している場合にはこちらも弁護士に依頼が必要
代理人が付いている場合には、本人だけの場合と異なり、法的に整理された強い主張が来る
ことが予想されます。弁護士はそれぞれの依頼人のために活動する立場になりますので、相
手方が依頼した弁護士が、こちらに有利な主張や事実を教えてくれることはありません。
相手方が弁護士に依頼している場合には、対等な主張・立証を行うために、こちらも弁護士
に依頼することが必要になります。
5.遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリット
1.時効管理と意思表示を確実に行える
遺留分侵害額請求権には、1 年の短期消滅時効があります(民法第 1048 条)。期限を過ぎ
たり、請求書面が不十分な記述になっていると、権利そのものが失われるため、適切なタイ
ミングと方法で意思表示を行うことが重要です。弁護士に依頼すれば、内容証明郵便による
意思表示や、その後の時効管理も含めて対応を任せることができます。
2.適正な遺留分侵害額を計算できる
遺留分侵害額は、相続財産の評価、生前贈与の取扱い、相続債務の控除など、金額の算定に
おいて複雑な法的知識が必要になります。弁護士はこれらの要素を整理し、資料を収集し、
適正な金額を算定して主張することができます。
3.調停委員への説明と交渉を任せられる
調停では、主張を法的に整理して分かりやすく調停委員に伝える必要があります。
本人のみで行った場合には、感情的な主張に終始して必要な法的主張をできなかったり、法
的主張を適切に伝えられないことにつながります。
弁護士に依頼することで、主張を法的に整理して分かりやすく調停委員に伝えることが可能
になります。
4.不成立後の訴訟にもスムーズに対応できる
調停が不成立になった場合には、訴訟に移行します。訴訟は専門性が高いため、現実的には
弁護士に依頼することになります。
調停段階から弁護士が関与していれば、訴訟への切り替えもスムーズに進められます。
5.心理的・時間的な負担を回避できる
相続は親族間の感情的な争いが混ざるため、調停に出席することには大きな心理的負担が生
じます。また、調停は平日に開かれるため、毎回仕事を休んで調停に出席することは困難で
す。
弁護士に依頼することで、このような心理的・時間的負担を回避することが可能になりま
す。
6.遺留分に関するお悩みは当事務所にご相談ください
遺留分侵害額請求の調停は、財産の評価や生前贈与の扱いなど複雑な判断が求められる手続
きです。1 年の消滅時効があり、対応の遅れや書面の不備で権利を失うおそれもあります。
当事務所では相続を取り扱う弁護士が、現時点での見通しや必要な手続きをご説明したうえ
で方針を一緒に決めていきます。お一人で悩まれる前に、まずはお気軽にお問い合わせくだ
さい。




