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他の相続人と連絡がつかない場合の遺産分割はどうする?弁護士が解説

公開日:2026.06.29
最終更新日:2026.06.29

1 よくあるご相談

遺産分割を進めたいのに、他の相続人と連絡がとれない――このようなお悩み
を抱えている方は少なくありません。たとえば、次のようなご相談が寄せられる
ことがあります。
•「父が亡くなったが、異母兄弟がいるようで連絡先が分からない」
•「相続人の一人が海外に住んでいて音信不通になっている」
•「何年も前に家族と疎遠になり、住所も電話番号も知らない」
•「手紙を送ったが返事がなく、手続きが止まっている」
遺産分割協議は、相続人全員が参加しなければ成立しません(民法 907 条 1
項)。そのため、一人でも連絡がつかない相続人がいると、手続き全体が進まなく
なってしまいます。
このページでは、他の相続人と連絡がつかない場合にどのような対応が考えら
れるのかを整理して解説します。

2 連絡がつかないケース

一口に「連絡がつかない」といっても、その状況にはさまざまなパターンがあ
ります。状況に応じて対応方法が異なるため、まずはどのケースに該当するかを
整理することが大切です。

⑴ 住所・連絡先が分からないケース

もともと面識がない相続人(たとえば前婚の子など)がいる場合や、長年に
わたって疎遠になっている場合、そもそも住所や電話番号を知らないことがあ
ります。このケースでは、まず相手の所在を調査する必要があります。

⑵ 連絡しても返事がないケース

住所は判明しているものの、手紙を送っても返事がなく、電話にも出ないと
いう場合です。相手が意図的に無視しているのか、それとも手紙が届いていな
いのかによって、次の対応が変わります。

⑶ 行方不明・生死不明のケース

長期間にわたり音信不通で、生死すら不明な場合もあります。このようなケ
ースでは、不在者財産管理人の選任や失踪宣告といった法的手続きが必要にな
る場合があります。

3 連絡がつかない場合の対応方法は?

連絡がつかない相続人がいる場合、大きく分けて以下の方法が考えられます。

⑴ 相手の住所を調査して連絡を試みる

最初に検討すべきなのは、相手の現在の住所を調べて改めて連絡をとること
です。住所が判明すれば、内容証明郵便などで遺産分割協議への参加を呼びか
けることができます。住所の調査方法については後述します。

⑵ 家庭裁判所の手続きを利用する

住所が判明していても話し合いがまとまらない場合や、住所が不明な場合に
は、家庭裁判所を通じた手続きを利用することになります。具体的には以下の
手続きがあります。

遺産分割調停・審判

相続人間で協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立
てることができます。調停でも解決しない場合は、審判手続きに移行します。
相手の住所が分かっている場合は、家庭裁判所から呼出状が送付されます。

公示送達

住所が不明な場合には、公示送達という方法が利用できることがあります。
公示送達とは、裁判所の掲示板に一定期間書類を掲示することで、送達があ
ったものとみなす手続きです。これにより、相手方の所在が不明であっても
手続きを進めることが可能になります。

不在者財産管理人の選任
相続人の中に行方不明の方がいる場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の
選任を申し立てることができます(民法 25 条)。不在者財産管理人は、行方
不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加する権限を持ちます。ただし、
遺産分割協議を行う場合には、家庭裁判所の許可(権限外行為の許可)が別
途必要です(民法 28 条)。

失踪宣告
7 年以上生死不明の場合には、家庭裁判所に失踪宣告の申立てを行うこと
ができます(民法 30 条)。失踪宣告がなされると、その方は法律上死亡した
ものとみなされ、その方の相続人が新たに遺産分割の当事者となります。

4 居所を調査する方法はある?

連絡がつかない相続人の住所を調べるには、いくつかの方法があります。

⑴ 戸籍の附票を取得する

最も一般的な方法は、相手の戸籍の附票(こせきのふひょう)を取得するこ
とです。戸籍の附票には、その方の住所の異動履歴が記録されているため、現
在の住民票上の住所を把握することができます。
相続人であれば、被相続人(亡くなった方)の戸籍から他の相続人の本籍地
を特定し、その本籍地の市区町村役場で戸籍の附票を請求できます。

⑵ 住民票を請求する

一応の住所がわかっており、現在もそこに住んでいるか転出したかなどを調
査する場合には、住民登録地の市区町村役場で住民票を請求する方法もありま
す。
まだ、その住所に住んでいる場合には、住民票で住所が明らかになりますし、
転出している場合には、転出先の住所を知ることができます。

5 自分で進めることはできる?

戸籍の附票の取得や住民票の請求は、相続人ご本人が市区町村役場で行うこと
ができます。相続人であることを証明する戸籍謄本等を持参すれば、窓口や郵送
で手続きが可能です。
また、家庭裁判所への調停申立てや不在者財産管理人の選任申立ても、弁護士
に依頼せずにご自身で行うことも法律上は可能です。裁判所のウェブサイトにも
申立書のひな形や記載例が掲載されています。
ただし、相続人の調査(戸籍の収集)は、被相続人の出生から死亡までのすべ
ての戸籍を取得する必要があり、転籍が多い方の場合は複数の役場に請求を行う
必要があります。また、家庭裁判所の手続きでは、申立書の作成や必要書類の準
備、期日への出席などが求められます。
手続きの難易度はケースによって大きく異なります。比較的単純な事案であれ
ば自力で進められることもありますが、相続人が多い場合や争いがある場合は、
専門家に依頼することを推奨します。

6 連絡がつかない場合の遺産分割の流れ

連絡がつかない相続人がいる場合、一般的には以下のような流れで手続きを進
めていくことになります。

ステップ 1:相続人の確定
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、法定相続人を確定しま
す。この段階で、思いがけない相続人(認知した子や養子など)が判明する
こともあります。
ステップ 2:所在の調査
連絡がつかない相続人について、戸籍の附票などを利用して現在の住所を
調査します。
ステップ 3:連絡の試み
住所が判明した場合は、手紙(できれば内容証明郵便)を送付して、遺産
分割協議への参加を呼びかけます。
ステップ 4:家庭裁判所の手続き
連絡がとれない場合や協議が成立しない場合は、家庭裁判所に遺産分割調
停を申し立てます。郵便には返事がない場合でも、調停には参加してくれる
ことがあります。住所が不明な場合は、公示送達の利用や不在者財産管理人
の選任を検討します。
ステップ 5:遺産分割の成立
調停で合意に至れば調停調書が作成されます。合意に至らない場合は審判
に移行し、裁判所が遺産の分割方法を決定します。

7 連絡がつかない場合に放置してしまうことによる問題

連絡がつかないからといって遺産分割をそのまま放置してしまうと、さまざま
な問題が生じます。

⑴ 相続登記の義務化への対応

2024 年 4 月 1 日から、不動産の相続登記が義務化されています。不動産を
相続で取得したことを知った日から 3 年以内に相続登記を行わなければ、正当
な理由がない限り 10 万円以下の過料が科される可能性があります(不動産登
記法 76 条の 2)。
なお、遺産分割がまとまらない場合でも、法定相続分での登記や相続人申告
登記を行うことで、義務化への当面の対応は可能です。

⑵ 相続人がさらに増える可能性

遺産分割を放置している間に相続人の一人が亡くなると、その方の相続人
(配偶者や子など)が新たに遺産分割の当事者になります。これを数次相続と
いいます。時間が経つほど関係者が増え、合意形成がより困難になります。

⑶ 遺産の散逸・劣化

預貯金や不動産などの遺産は、放置することで価値が下がったり管理費用が
かさんだりすることがあります。建物の劣化や固定資産税の負担、預貯金の休
眠口座化なども考えられます。

⑷ 相続税の申告期限への影響

相続税の申告が必要な場合、申告期限は被相続人が亡くなったことを知った
日の翌日から 10 か月以内です(相続税法 27 条)。遺産分割が未了のまま期限
を迎えた場合は、法定相続分で仮の申告を行うことになります。

8 弁護士に依頼するメリット

連絡がつかない相続人がいるケースでは、弁護士に対応を依頼することで以下
のようなメリットがあります。

⑴ 相続人の所在調査を効率的に行える

弁護士は職務上の請求として戸籍謄本や住民票を取得できるほか、弁護士会
照会(23 条照会)を利用した調査も可能です。これにより、個人では把握しに
くい情報にアクセスできる場合があります。

⑵ 裁判所の手続きを代理してもらえる

遺産分割調停や審判、不在者財産管理人の選任申立てなどの裁判所手続きは、
弁護士が代理人として対応できます。書類の作成から期日への出席まで一貫し
て任せることができるため、手続きの負担が軽減されます。

⑶ 他の相続人との交渉を任せられる

連絡がとれた場合でも、相続人間の話し合いが感情的になりがちなケースで
は、弁護士が間に入ることで冷静な協議がしやすくなります。法的な根拠をも
とに適切な分割案を提示することもできます。

⑷ 手続き全体を見通した対応が可能

相続登記の期限、相続税の申告、遺産の管理といった複数の課題を並行して
対応する必要がある場合、弁護士に相談することで手続き全体の見通しを立て
やすくなります。必要に応じて税理士や司法書士とも連携し、ワンストップで
対応できる場合もあります。

9 他の相続人と連絡がつかない場合の遺産分割は弁護士にご相談ください

他の相続人と連絡がつかない場合でも、戸籍の附票による住所調査や、家庭裁
判所の手続き(調停・不在者財産管理人の選任・失踪宣告など)を利用すること
で、遺産分割を進めることは可能です。
ただし、放置してしまうと相続登記の義務化への対応が遅れたり、関係者が増
加して手続きがより複雑になったりするおそれがあります。早めに対応を検討さ
れることをおすすめします。
寺岡法律事務所では、相続人の所在調査から遺産分割調停・審判の代理まで、
連絡のつかない相続人がいるケースに幅広く対応しています。お困りの方は、お
気軽にご相談ください。

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