- 公開日:2026.06.25
- 最終更新日:2026.06.25
家族が亡くなったとき、遺された財産相続人間で分ける手続きが必要になります。
これが「遺産分割」です。遺産分割は、法律で手続きが定められており、その流れや
注意点を正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、遺産分割の基本的な流れや注意点、自分で手続きを進められる場合
と専門家に相談したほうが良い場合について解説します。
1 遺産分割の流れ
遺産分割とは、亡くなった方(被相続人)の財産を相続人の間で分ける手続き
のことです。共同相続人は、被相続人が遺言で分割を禁じた場合を除き、いつで
も協議によって遺産の全部または一部を分割できます(民法 907 条 1 項)。
遺産分割は、一般的に次のような流れで進みます。
⑴ 遺言書の有無の確認
相続が発生したら、まず遺言書が残されていないかを確認します。遺言書が
ある場合には、原則としてその内容に従って遺産を分けることになります。自
筆証書遺言が見つかった場合には、家庭裁判所で検認の手続きが必要です(民
法 1004 条 1 項)。なお、法務局における自筆証書遺言の保管制度を利用してい
る場合には、検認は不要です(法務局における遺言書の保管等に関する法律 11
条)。公正証書遺言については、全国の公証役場の遺言検索システムを利用し
て確認できます。
⑵ 相続人の確定
遺産分割協議を有効に行うためには、相続人全員が参加する必要があります。
1 人でも欠けた状態で行った協議は無効となりますので、被相続人の出生から
死亡までのすべての戸籍を収集し、法定相続人を正確に確定させることが重要
です。
法定相続人の範囲は、民法 887 条以下に規定されています。配偶者は常に相
続人となり(民法 890 条)、それ以外では子(第 1 順位)、直系尊属(第 2 順
位)、兄弟姉妹(第 3 順位)の順で相続人となります。
親族がどこにいるかは分かり切っているように思いますが、再婚や養子縁組
などで、思いがけない相続人が判明することもあります。
⑶ 相続財産の調査
遺産分割の対象となる財産を漏れなく調査します。預貯金、不動産、有価証
券などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含めて調査す
る必要があります。
不動産については、市区町村役場で名寄帳や固定資産評価証明書を取得して
確認できます。預貯金は各金融機関に残高証明書を請求します。これらを一覧
にまとめた「財産目録」を作成しておくと、その後の協議がスムーズに進みま
す。マイナスの財産が多い場合には、相続開始を知ってから 3 か月以内に相続
放棄を検討することも選択肢となります(民法 915 条 1 項)。
⑷ 遺産分割協議
遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合には、相続
人全員で遺産の分け方を話し合います。これが「遺産分割協議」です。
遺産分割協議では、法定相続分をベースに、誰がどの財産を取得するかを決
めていきます。相続人全員の合意があれば、法定相続分と異なる割合で分割す
ることも可能です。必ずしも一堂に会する必要はなく、電話やメール、リモー
ト会議などで意見をまとめる方法でもかまいません。
遺産の分割方法には、主に次の 4 つがあります。
現物分割:遺産をそのままの形で各相続人に割り振る方法です。例えば、自
宅不動産は配偶者に、預貯金は子に、というように分けます。
代償分割:特定の相続人が遺産の現物を取得し、他の相続人に対して代償金
を支払う方法です。不動産など分けにくい財産がある場合に用いられます。
換価分割:遺産を売却して金銭に換え、その金銭を相続人で分配する方法で
す。公平に分けやすい反面、売却までに時間や費用がかかることがあります。
共有分割:遺産を相続人の共有とする方法です。他の方法がとれない場合の
最終手段として用いられることが多く、後に共有関係の解消を巡ってトラブル
になる可能性があるため、当事務所では推奨していません。
⑸ 遺産分割協議書の作成
遺産分割の内容が決まったら、「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割協
議書は、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約・名義変更、相続税の
申告などの手続きで必要になります。相続人全員が署名し、実印で押印のうえ、
印鑑証明書を添付するのが望ましいです。
⑹ 遺産分割調停・審判
協議がまとまらない場合や、協議ができない事情がある場合には、家庭裁判
所に遺産分割調停の申立てをすることになります。調停では、調停委員が間に
入って話し合いの仲立ちをしてくれます。
調停でも合意に至らなかった場合には、自動的に遺産分割審判に移行します。
審判では、裁判官が遺産の種類・性質や各相続人の事情などを考慮して分割方
法を決定します。
2 遺産分割の注意点
⑴ 相続人全員の参加が必要
遺産分割協議は、相続人全員が参加しなければ無効となります。例えば、被
相続人に認知した子がいた場合や、前妻との間の子がいた場合には、その方も
相続人となりますので、漏れなく把握しておく必要があります。協議成立後に
新たな相続人が判明した場合、協議をやり直す必要が発生します。
⑵ 判断能力が不十分な相続人への対応
認知症などにより判断能力が不十分な相続人がいる場合、そのままでは有効
な意思表示ができません。この場合は、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し
立てる必要があります。また、未成年の相続人がいる場合で、親権者も相続人
であるときは利益相反となるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立て
ます。
⑶ 相続税の申告期限に注意
遺産分割自体には法律上の期限はありません。しかし、相続税の申告・納付
期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から 10 か月以内です。た
だし、遺産分割を完了させなくても相続税の手続きを行うことができます。ま
れに、相続税の申告期限を理由にして、不合理な分割内容に合意することを要求されることがありますので注意しましょう。
⑷ 不動産の相続登記の義務化
2024 年 4 月 1 日から、不動産の相続登記が義務化されました。相続により
不動産を取得したことを知った日から 3 年以内に相続登記を行う必要があり
ます。正当な理由なく申請を怠った場合には、10 万円以下の過料の対象となり
ます。なお、遺産分割が完了できなくても登記手続きを行うことができますの
で、焦って不合理な分割内容に応じないように注意しましょう。
⑸ 遺産分割協議のやり直しに伴うリスク
一度成立した遺産分割協議は、相続人全員の合意があればやり直すことがで
きます。しかし、全員の合意を得ることは困難ですし、登記などの手続きコス
トも発生しますので、1 回で適切にまとめるようにしましょう。
⑹ 遺産分割前の財産処分に注意
遺産分割が完了するまでの間、遺産は相続人全員の共有状態にあります。こ
の間に一部の相続人が勝手に財産を処分してしまうと、他の相続人との間でト
ラブルが生じます。処分しないようにするか、全員の同意のもとで処分をする
ようにしましょう。トラブル防止のためにも、早めに遺産分割を終わらせるこ
とが必要です。
3 遺産分割は自分でできる?
遺産分割の手続きは、すべてを専門家に依頼しなければならないわけではあり
ません。手続きの内容によっては、ご自身で進められるものもあります。一方で、
専門的な知識が求められる場面もあります。
⑴ 自分でできる手続き
戸籍謄本の収集:相続人の確定に必要な戸籍謄本は、市区町村役場の窓口や
郵送で請求できます。令和 6 年 3 月 1 日からは戸籍の広域交付制度が開始さ
れ、本籍地以外の市区町村でも戸籍謄本を請求できるようになりました。
財産の調査:預貯金の残高証明書は各金融機関に、不動産の登記情報は法務
局に、固定資産評価証明書は市区町村役場にそれぞれ請求できます。
遺産分割協議:相続人間で対立がなく、話し合いがスムーズに進む場合には、
ご自身で協議を進めることが可能です。
遺産分割協議書の作成:遺産分割協議書に決まった書式はありませんので、
ご自身で作成することもできます。ただし、不動産の表示は登記事項証明書の
記載どおりに正確に記載し、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号などを特
定できるように記載する必要があります。相続人全員の署名と実印による押印、
印鑑証明書の添付が必要です。
法定相続情報一覧図の作成・申出:法務局に対し、法定相続情報一覧図の保
管及び交付の申出を行うことができます。これにより、戸籍謄本の束を各機関
に提出する手間を省くことができます。
⑵ 専門家に相談したほうが良い手続き
不動産の相続登記:相続登記は法務局に申請しますが、申請書の作成や必要
書類の準備には専門的な知識が求められます。特に、数次相続(相続が重なっ
ている場合)や、相続人が多数にわたる場合には複雑になります。司法書士に
依頼するケースが多い手続きです。
相続税の申告:相続税の計算は、財産の評価方法や各種特例の適用要件が複
雑です。特に、不動産の評価や小規模宅地等の特例の適用には専門的な判断が
必要です。税理士に相談・依頼することが一般的です。
遺産分割調停・審判:家庭裁判所での手続きは、書類の作成や法律的な主張
の組み立てが必要です。特に、特別受益や寄与分が問題となる場合には法的な
専門知識が不可欠です。弁護士に依頼することで、適切な主張・立証を行うこ
とができます。
遺留分に関する問題:遺留分侵害額請求は、遺留分の算定基礎財産の確定や
遺留分額の計算など、法律上の専門的な判断が必要です。請求期限(相続の開
始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から 1 年、民法
1048 条)もありますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
4 専門家に相談すべきケース
次のようなケースでは、専門家に相談することを推奨しています。
相続人間で意見が対立している場合:遺産の分け方について相続人間の意見が
まとまらない場合には、専門家である弁護士が入ることで、法律上の権利関係を
整理し、合意に向けた話し合いを進めやすくなります。
相続人が多数いる場合や連絡がとれない相続人がいる場合:相続人が多数にわ
たるケースや、連絡先が分からない相続人がいる場合には、相続人の調査や連絡
の方法について専門的な対応が必要になることがあります。長期間行方不明の相
続人がいる場合には、不在者財産管理人の選任申立て(民法 25 条)を検討する
必要があります。
遺産に不動産が含まれる場合:不動産の評価方法や分割方法は複雑になりがち
です。固定資産税評価額、路線価、不動産鑑定評価額など複数の評価方法があり、
どの評価を採用するかによって各相続人の取得額が大きく変わることがありま
す。
特別受益や寄与分が問題となる場合:被相続人から生前に多額の贈与を受けた
相続人がいる場合(特別受益、民法 903 条)や、被相続人の介護や事業に特別の
貢献をした相続人がいる場合(寄与分、民法 904 条の 2)には、相続分の修正が
問題となります。これらの認定は法的な判断を要しますので、専門家の助言が重
要です。
被相続人に借金がある場合:プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合に
は、相続放棄(民法 938 条)や限定承認(民法 922 条)を検討する必要がありま
す。相続放棄の期限は、原則として相続の開始を知ったときから 3 か月以内です
ので(民法 915 条 1 項)、早めの対応が必要です。
遺言書の有効性に疑いがある場合:遺言書の内容や作成の経緯に疑問がある場
合には、遺言の有効性を争うことも考えられます。遺言能力の有無や方式の遵守
といった法律上の要件の検討には、弁護士の判断が必要です。
5 遺産分割を弁護士に依頼するメリット
遺産分割について弁護士に相談・依頼した場合には、以下のような点でサポー
トを受けることができます。
法律上の権利関係を正確に把握できる:法定相続分、特別受益、寄与分、遺留
分など、遺産分割に関わる法律上の論点は多岐にわたります。弁護士に相談する
ことで、ご自身の法律上の権利や取得の見通しについて正確な情報を得ることが
できます。
他の相続人との交渉を任せることができる:相続人同士の直接の話し合いは、
感情的になりやすく、かえって話がまとまらなくなることがあります。弁護士が
代理人として交渉にあたることで、法的な根拠に基づいた冷静な話し合いが可能
になります。
遺産分割調停・審判に対応できる:家庭裁判所での手続きは、法的知識や手続
きの経験が求められます。弁護士に依頼することで、書面の作成から期日への出席まで、手続き全般のサポートを受けることができます。
適切な書類を作成できる:遺産分割協議書は、その後の各種相続手続きの基礎
となる重要な書類です。記載に不備があると、法務局や金融機関で手続きを受け
付けてもらえないことがあります。弁護士が作成することで、法的に問題のない
正確な書類を準備することができます。
総合的な解決が図れる:遺産分割に関連して、遺留分侵害額請求、使途不明金
の問題、不動産の評価や分割方法の選択など、複数の法的問題が同時に生じるこ
とがあります。弁護士に依頼することで、これらの問題を一体的に検討し、全体
として適切な解決を図ることが可能になります。
6 遺産分割に関するお悩みは寺岡法律事務所にご相談ください
遺産分割は、ご家族の将来にも関わる大切な手続きです。手続きの進め方に迷
われた場合や、相続人間の意見調整が難しい場合には、お早めにご相談いただく
ことで、選択肢を広く持った状態で対応を検討することができます。
当事務所では、遺産分割協議のサポートから、遺産分割調停・審判の代理、遺
産分割協議書の作成まで、幅広く対応しております。ご相談者様の状況を丁寧に
お伺いし、法律上の権利関係を整理したうえで、具体的な対応方針をご提案いた
します。
遺産分割に関してお悩みの方は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。
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