- 公開日:2026.07.24
- 最終更新日:2026.07.24
アパートや賃貸マンション、貸店舗、貸駐車場といった収益不動産の相続では、居住用不動産
とは異なる注意ポイントがあります。この記事では、亡くなった方(被相続人)が収益不動産
を所有している場合の注意点や、遺産分割までの手順について解説します。
目次
収益不動産の特徴
収益不動産では通常の居住用不動産とは異なるポイントがあります。
①借主がいる
収益不動産では、借主がおり、賃貸借契約関係、家賃債権、敷金の返還債務など、付随する契
約関係が多数存在しています。
②ローンがある
居住用不動産では、ほとんどの場合は団体信用生命保険に加入しており、所有者(ローンの借
主)が死亡した場合にはローンの残額が保険から支払われるため、遺産分割の時点ではローン
は残っていません。
これに対して、収益不動産では相続時においてもローンが残っていることが多いです。むし
ろ、税金対策でローンを残すことが目的の場合も多いです。
③評価額に開きが生じる
収益不動産では評価方法によって金額が大きく変わるため、当事者間で主張する金額に大きな
差が生じることになり、争いが長期化しやすくなります。
収益不動産を相続する場合に確認すべき 4 つのポイント
物件の「不動産評価額」はどう算出するか
不動産の評価額には複数の基準があります。固定資産税の計算に用いられる固定資産税評価
額、路線価などに基づく評価額、実際に売買される場合の時価・実勢価格、物件が生み出す収
益に着目して算定する収益価格などです。
相続税の申告では、原則として路線価などに基づく相続税評価額を用います。人に貸している
建物(貸家)やその敷地(貸家建付地)は、借家権割合などが控除されるため、自分で使用し
ている場合よりも評価額が低くなります。一方、相続人間の遺産分割では時価を基準とするの
が一般的であり、収益不動産では収益還元の考え方が重視されることもあります。どの評価を
前提にするかによって結論が大きく変わるため、必要に応じて不動産鑑定士による鑑定を依頼
することになります。
物件のローン(借入金)が残っていないか
収益不動産には、購入や建築の際の借入金(ローン)が残っていることが少なくありません。
被相続人の債務は、相続放棄などをしない限り相続人が引き継ぎます。相続人間の遺産分割協
議で「物件を取得する人がローンも全部引き継ぐ」と合意しても、その合意だけでは債権者で
ある金融機関に対抗できません。特定の相続人だけが債務を負う形にするには、金融機関の同
意を得て債務引受の手続を行う必要があります。
現在の物件の管理状況や「賃貸条件」はどうなっているか
物件の貸主(賃貸人)としての地位は、相続により相続人に引き継がれます。そこで、賃借人
ごとの契約内容(賃料の額、契約期間、更新の条件、普通借家か定期借家か)、敷金・保証金
の額と返還の条件(敷金の返還債務も相続人が引き継ぎます)、賃料の滞納の有無、管理会社
との管理委託契約の内容、建物の修繕の履歴や今後の修繕の予定などを、契約書や帳簿類で確
認します。
また、被相続人名義の口座が凍結されると、賃料の振り込みや管理費・ローンの引き落としが
止まってしまうことがあります。賃借人や管理会社に相続の発生を知らせ、賃料の支払先につ
いて相続人間で調整のうえ案内するなど、実務的な対応も早めに行う必要があります。
遺産分割が終わるまでの「家賃(賃料)」はどう扱うか
相続開始後、遺産分割が成立するまでの間に生じた賃料については、判例により、遺産とは別
個の財産として、各共同相続人が法定相続分に応じて分割して取得し、その帰属は後に成立し
た遺産分割の影響を受けないとされています。つまり、遺産分割によって物件を取得すること
になった相続人がいても、分割が成立するまでの間の賃料が当然にその相続人のものになるわ
けではありません。
もっとも、相続人全員が合意すれば、遺産分割までの賃料を遺産分割の話し合いの中に含め
て、まとめて精算することは可能です。賃料の取り扱い、経費の取り扱いなども、遺産分割時
に適切に定める必要があります。
収益不動産を相続し、遺産分割するまでの手順
収益不動産の相続は、一般的に次のような手順で進めます。
⑴ 相続人と遺産の調査・確定:戸籍を収集して相続人の範囲を確定するとともに、
遺言書の有無を確認します。物件については、登記事項証明書、固定資産評価証明書、賃貸借契約書、
レントロール(賃貸条件の一覧表)、ローンの残高証明書などを取得します。
⑵ 関係者への連絡:賃借人・管理会社・金融機関に相続の発生を知らせ、賃料の支払先やロ
ーンの取り扱いについて調整します。
⑶ 物件の評価:査定や鑑定によって、遺産分割の前提となる評価額の資料を揃えます。
⑷ 遺産分割協議:物件を誰が取得するか、その方法(1 人が取得して他の相続人に代償金を支
払う代償分割、売却して代金を分ける換価分割など)を話し合います。共有名義とすることも
可能ですが、将来の売却や修繕の際に意見がまとまらず紛争の原因になりやすいため推奨でき
ません。話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を利用します。
⑸ 相続登記:相続登記の申請は義務化されており、原則として、相続により不動産の所有権
を取得したことを知った日から 3 年以内に登記の申請をする必要があります。正当な理由なく怠
った場合には過料の対象となることがあります。
⑹ 賃料・経費の精算と賃借人への通知:遺産分割までの賃料や経費を精算し、賃借人に対し
て新しい貸主(賃貸人)を通知します。
代償金が足りないときはどうするか
収益不動産の他に現金や預貯金がほとんど存在しないということもあります。むしろ、現金や
預貯金を減らして相続税を減らすために不動産に変えている場合もあります。
このような場合、収益不動産を引き継がない相続人に支払うべき代償金を支払えないという事
態が発生します。
このような場合には、収益不動産を担保に借り入れを実施することも検討されます。
収益不動産の相続を弁護士へ相談すべき理由
複雑な不動産評価や賃貸条件の調査を正確に進められる
収益不動産の相続では、評価額の妥当性の検証、賃貸借契約やローンの内容の確認、遺産分割
までの賃料の精算など、法律と実務の両面にわたる調査・検討が必要になります。弁護士に依
頼することで、必要な資料の収集や契約内容の分析、不動産業者・鑑定士・税理士など他の専
門家との連携を含めて、これらの調査を正確に進めることができます。見落としがあると、遺
産分割のやり直しや想定外の負担につながりかねないため、初期段階の調査が特に重要です。
収益不動産がある場合には、遺産額自体がかなり大きいことが多いため、弁護士に依頼するこ
とを推奨いたします。
他の相続人との交渉を任せることで、親族間のトラブルを防げる
収益不動産は金額が大きく、評価や賃料の分配をめぐって相続人間の利害が対立しやすい財産
です。当事者同士で話し合いを続けると、感情的な対立に発展し、関係の修復が難しくなって
しまうことも少なくありません。弁護士が代理人として交渉することで、法的な根拠と客観的
な資料に基づいた冷静な話し合いが可能になり、親族間の関係悪化を防ぎながら解決を目指す
ことができます。調停や審判に移行した場合にも、一貫した対応を任せることができます。
収益不動産に関する相続のお悩みは当事務所へご相談ください
収益不動産の相続では、評価額、ローン、賃貸条件、遺産分割までの賃料という 4 つのポイント
を押さえたうえで、早い段階から計画的に手続を進めることが、トラブルの防止につながりま
す。当事務所では、相続財産の調査から、他の相続人との交渉、遺産分割協議書の作成、調
停・審判への対応まで一貫してサポートしています。アパートや賃貸マンションなどの収益不
動産の相続でお悩みの方は、お早めに当事務所へご相談ください。




