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相続人調査について

公開日:2025.11.17
最終更新日:2025.12.18

相続人調査とは

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。
そのため、まず相続人の範囲を確定させることが欠かせません。

相続人が確定しないまま遺産分割を進めてしまうと、その協議は無効となり、再度やり直すことになります。
親族を亡くし、つらい中で時間を作って行った遺産分割協議を、もう一度やり直さなければならないのは大きな負担であり、とても悔しいことです。
こうした事態を防ぐためにも、相続人の調査は丁寧かつ確実に行う必要があります。

ここでは、相続人調査とは何か、そしてなぜ相続人調査が必要なのかについてご説明します。

相続人調査

相続人調査とは、戸籍謄本などをもとに、相続人である人と相続人ではない人を区別し、相続人全員を特定する調査のことです。

一般的に、相続人は配偶者と子であり、子がいない場合は親または孫、それらもいない場合は兄弟姉妹が相続人となります。

しかし、配偶者や子であっても、故人の結婚前の人生をすべて把握しているとは限りません。
実際の調査で、「結婚前に別の方との間に子どもがいた」「養子縁組をしていた」などの事実が発覚することも珍しくありません。

では、なぜ相続人調査を行う必要があるのでしょうか。

相続人調査が必要な理由

自分たちが把握していない相続人が存在すると、なぜ相続トラブルが起こる可能性があるのでしょうか。

遺産分割協議には相続人全員が参加し、遺産分割協議書には全員の署名・押印が必要です。
そのため、相続人調査を行わずに遺産分割を進めてしまうと、後から知らなかった相続人が現れ、その協議が無効になることがあります。

この場合、再度遺産分割協議をやり直さなければならず、時間や手間がかかるだけでなく、
「自分の知らない間に遺産分割を勝手に決められた」
といった感情的な対立を招き、無用な紛争に発展することも少なくありません。

さらに、「他の相続人がいるかもしれない」という状態では、銀行や不動産の名義変更などの相続手続は受け付けてもらえません。

こうした事態を防ぐためにも、被相続人が亡くなったら、できるだけ早く相続人調査を行い、不必要なトラブルの芽を摘んでおくことが大切です。

相続人調査に必要なこと

相続が発生すると、まず行うべきことの一つが「相続人調査」です。
言葉だけは耳にしたことがあっても、実際に何を、どのように行うのかをご存じない方も多いのではないでしょうか。

ここでは、相続人調査を行う際に必要となる手順やポイントについて、分かりやすくご説明します。

相続人調査でやらなければならないこと

相続人調査とは、被相続人の配偶者や子などの知っている相続人以外に、相続人となる可能性のある人物がいないかを確認するための調査を指します。

そのためには、被相続人がこれまでに築いたすべての家族関係――婚姻関係、親子関係、兄弟姉妹関係など――を漏れなく洗い出す必要があります。

相続人調査をするうえで、必要となる事は、下記の2つです。

被相続人の一生分の戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍)を集める

相続人調査の第一歩は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を集めることです。
(厳密には10歳頃からの戸籍で足りる場合もありますが、出生からすべて集める方が安全です。)

戸籍は、結婚や離婚のたびに新しい戸籍に移ります。
そのため、現在の戸籍から順に遡り、出生時の戸籍までたどる必要があります。

さらに、被相続人に子どもがいれば、その子どもの戸籍も順に確認し、現在結婚しているか、すでに死亡しているか、子どもや配偶者がいるか、などを調べていきます。

特に、被相続人に子どもがいるか、両親が健在かによって相続人の範囲は大きく変わります。
必ず**「生まれたときから亡くなるまで」**の戸籍をすべて集めましょう。

戸籍が全て集まったら、次は

相続人を確定する

戸籍を確認すると、故人と親族関係のある人物が分かります。
この情報をもとに家系図(相続関係図)を作成すれば、相続人が誰であるかを整理できます。

通常、配偶者は常に相続人となります。
加えて、子どもがいれば、その子ども(前の配偶者との子も含む)が相続人になります。
子どもがいない場合は両親が、両親もすでに亡くなっている場合は兄弟姉妹が相続人となります。

このように相続人調査は非常に重要ですが、戸籍を遡って関係をたどり、内容を整理して相続人を確定する作業は、専門知識がなければ困難です。
そのため、相続人調査は相続の専門家に依頼することが確実です。

戸籍の種類と収集方法

普段はあまり目にする機会のない「戸籍」ですが、相続が発生すると、これを集めて相続人を特定する必要があります。

しかし、戸籍の種類や収集方法について、普段から理解している方は多くありません。
そこで、ここでは戸籍の種類や集め方について、分かりやすくご説明します。

戸籍の種類

そもそも戸籍とは、人の出生とその年月日(および両親の氏名)、婚姻や離婚、その年月日、養子縁組とその年月日などが記載された公的な記録です。
戸籍には、大きく分けて次の3種類があります。

戸籍謄本
 現時点での戸籍の情報をまとめたものです。婚姻・離婚、子どもの誕生、家族の死去などにより内容が変化します。
 このため、公的機関に提出する戸籍謄本は「〇か月以内のもの」など、できる限り最新のものを求められることが多くあります。

除籍謄本
 戸籍に記載されている全員がいなくなった(死亡など)ことで、もともと戸籍謄本であったものが閉鎖されたものです。
 閉鎖されているため、内容が変更されることはありません。

原戸籍
 法改正や様式変更により戸籍謄本を作り替えた際の、古い戸籍です。こちらも閉鎖されており、内容は変化しません。

では、これらの中から、相続人を特定するために、どの戸籍をどのように収集すればよいのでしょうか。

相続手続きに必要な戸籍の収集方法

パスポート申請などでは戸籍謄本のみで足りますが、相続手続きを行う場合は、亡くなった人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍に加え、相続人全員の戸籍謄本も収集しなければなりません。
本来は1通ずつ戸籍を遡って集めていく必要がありますが、「被相続人について、出生(または婚姻)から死亡までの戸籍をすべて」と役所に伝えると、その役所で保管している分をまとめて発行してもらえる場合があります。
また、戸籍に記載されている人全員の住所が分かる戸籍の附票を取り寄せることで、相続人の住所を調べる手掛かりになります。

戸籍は、被相続人の本籍地の市区町村役場に請求することで取得できます。
請求方法は、
・本籍地の役場に直接出向いて請求する方法
・郵送で請求する方法
の2通りがあります。

市区町村役場に直接行く場合は、以下の3つを持参する必要があります。
・戸籍交付申請書(各市区町村が定める様式に必要事項を記載)
・印鑑(認印でも可)
・本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
※事情や役所によって異なる場合もあるためHPなどで確認してください。

郵送で請求する場合、下記の4点が必要になります。
・戸籍交付申請書(各市区町村が定める様式に必要事項を記載のうえ、印鑑を押印)
・本人確認書類のコピー(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどのコピー)
・手数料に相当する定額小為替(不足した場合を考慮し、多めに同封)
・返信用封筒と切手
※事情や役所によって異なる場合もあるためHPなどで確認してください。

最近は、市区町村によってはコンビニでの請求も可能な場合もありますが、導入されていない市町村もあります。

戸籍収集の手数料と時間

相続が発生した際、忌引き期間を過ぎれば、普段通りに仕事をされる方がほとんどです。
しかし、「戸籍収集(相続人調査)が重要」と分かっていても、手数料や取得にかかる時間が分からなければ、想像以上の負担に感じてしまうかもしれません。

そこで、事前に戸籍収集を行う際に必要となる手数料と、書類取得に要する時間をまとめました。
ぜひ参考になさってください。

戸籍収集の手数料

戸籍収集でかかる手数料について、3つの戸籍の種類がありましたが、それぞれ取得に必要な手数料が異なります。また、基本的に現金での支払いです。
下記は大阪市の窓口で請求した際の費用です。

戸籍の種類 手数料
戸籍謄本 450円
除籍謄本 750円
原戸籍 750円
戸籍の附票 300円

※大阪市の例です

郵送で戸籍を請求する場合は、上記の費用分を郵便局で購入できる定額小為替で用意し、請求書・切手を貼った返信用封筒・本人確認書類を同封して送付します。

役所に納める手数料自体は、窓口請求と郵送請求で変わらないことが多いです。
ただし、定額小為替の発行には別途手数料がかかるため、郵送請求のほうがやや割高になります。

では、実際に取得までにはどのくらいの時間がかかるのでしょうか。

戸籍収集の時間

市町村役場で直接請求する場合、被相続人の本籍地が近く、窓口が空いていれば10分程度で手続きが完了します。
ただし、本籍地が遠方の場合は移動時間がかかり、交通費の負担も発生します。

一方、郵送で請求する場合は、到着から発行・返送まで2週間程度かかることがあります。
そのため、郵送請求をする際は、日程に余裕をもって準備することが大切です。

戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍の見方

戸籍を入手できたら、その内容を確認しながら相続関係を整理し、必要に応じて次の戸籍を遡っていきます。
しかし、戸籍を読み慣れている方は多くありません。

そこでここでは、戸籍の見方を、参考画像とあわせて分かりやすくご説明します。

戸籍謄本の見方

戸籍謄本は、現在の戸籍をまとめたものです。

記載されている内容は、下記の8つです。

  • 本人の氏名、本籍地、生年月日
  • 本人の両親の氏名、両親から見た続柄
  • 出生地と出生年月日、出生届を出した日、受理した自治体、届出した人
  • 結婚した年月日、結婚する前の本籍地(従前戸籍)、結婚届を受理した自治体
  • 配偶者の氏名、本籍地、生年月日
  • 配偶者の両親の氏名、両親から見た続柄
  • 配偶者の出生地と出生年月日、出生届を出した日、受理した自治体、届出した人
  • 配偶者の結婚した年月日、結婚する前の本籍地、結婚届を受理した自治体

相続が発生した際に、必ず把握したいのはこの中でも次の3つです。

  • 本人の本籍地
  • 本人の両親の氏名
  • 結婚する前の本籍地(従前戸籍)

本人の本籍地を把握することで、現在の戸籍以外に調べるべき書類や、その取得先を特定できます。
これは、本籍地と住所地が異なる場合があるためです。

また、本人の両親の氏名を把握すれば、両親の戸籍謄本(または除籍謄本)を取り寄せ、両親や兄弟姉妹の有無を確認できます。
両親の戸籍を取得するには、結婚前の本籍地を知っておくことが必要です。

除籍謄本の見方

除籍謄本は、結婚・離婚や死亡により、戸籍に残っている人がいなくなって閉鎖された戸籍の情報を記載したものです。
記載されている内容も戸籍謄本とほとんど同じですので、取得した後はあえて区別して読む必要はありません。
戸籍謄本と同様に次の事項を確認していきましょう。

改製原戸籍の見方

法改正や様式の変更により、戸籍謄本を作り替える必要が発生した際の、古い方の戸籍です。
要するに、デジタル化される前に紙で管理されていた時の戸籍です。

上記の除籍謄本の中に「戸籍改製」という欄がありますが、この記載がある場合は、さらに改製原戸籍を取り寄せて、その改製原戸籍を参照して、被相続人の家族関係など、戸籍の情報を集める必要があります。
平成前半生まれの方の場合は、デジタル化によって元の戸籍(改製原戸籍)から新しい戸籍謄本に移っているため、一度も戸籍を動いたことがなくても戸籍謄本と改製原戸籍の2つを集める必要が生じます。

様式が大きく変わっていますが、戸籍謄本と同じ内容が記載されています。
縦書きであったり、手書きであったりと読みにくいですが、同様に次の事項を確認していきます。

 

これら3種類の戸籍を取り寄せていくことで、故人の出生から死亡までの履歴、それによって判明したすべての相続人の出生から現在までの履歴を確認することで、相続人の範囲を確認することができます。

これらの3種類の戸籍の内容と、その中でも相続人調査のために注目するポイントについて説明させていただきました。戸籍の見方について、この説明を読んでも難しい、面倒だと思った方は、ぜひ相続の専門家である弁護士に相談してください。

相続人調査を専門家に依頼すべき理由

相続が発生した際、最初に行うべきことのひとつが「相続人調査」です。
これは主に戸籍の収集を通じて進めますが、実際にはさまざまな理由で難しい場合があります。

多くの方は平日の日中に仕事をしており、空いている時間は平日夜間や土日祝日です。
しかし、市区町村役場の窓口は平日の日中しか開いていないため、働いている方が直接行くのは困難です。

さらに、実家が遠いなどの理由で本籍地が遠方の場合は、郵送請求か現地までの訪問が必要になります。
郵送の場合でも、慣れない定額小為替の準備や書類の整備など、手間がかかります。

ようやく戸籍を入手しても、その内容を正確に読み解くのは容易ではありません。

こうした手続きを漏れなく、かつ手間をかけずに行える点で、専門家に依頼するメリットは非常に大きいです。
自分で戸籍を取りに行けない場合でも、専門家が代わりに取得し、相続人調査まで確実に実施してくれます。これにより、調査漏れや誤りを防げます。
さらに弁護士であれば、相続で揉めやすいポイントを熟知しているため、早期かつ円滑に遺産分割を解決へと導くことが可能です。

相続人調査は、相続に強い弁護士へご依頼ください。

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