- 公開日:2025.10.31
- 最終更新日:2025.12.18
目次
民事信託とは
民事信託とは、文字通り「財産を信じて託す」という契約です。
自分の財産を第三者に託し、使い方を指定して管理してもらうことで、自分が財産を管理できなくなったときでも希望通りに活用することができます。
例えば、自分の預貯金を子どもに託し、将来認知症になったときでも、そこから福祉施設の入居費用を支払ってもらったり、孫に小遣いを渡してもらうことが可能になります。
家族信託?民事信託?
「家族信託」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思います。結論から言うと、法律的には民事信託と家族信託に違いはありません。
財産を託す相手は銀行でも家族でも専門士業でもかまいません。
銀行や専門士業に任せる場合は報酬が必要ですが、家族に託す場合は報酬が不要です。
そのため、特に認知症対策などでは「家族に託す信託」が多く利用されます。
そして、主に行政書士がこのような民事信託の契約書を作成するサービスをするときに「家族信託」という名称を使用しています。
もちろん、そのような契約書は弁護士などの専門家も作成しています。
つまり、呼び方は違っても、実際にはどちらも同じ「民事信託」です。
民事信託でできること
民事信託は、使い方を指定して財産を預けるという契約ですので、様々なことに利用できます。
ここでは、老後対策に利用できる使い方を中心に紹介します。
認知症になった後の生活費の支払い
例えば、財産管理能力の高い子に財産を預けた上で、毎月自分が必要な生活費を支払ってもらうという使い方を指定します。
すると、自身が認知症になった後であっても、十分な生活費を、自身の財産から支払うことが可能になります。
ここで、後見とはどう違うのか?という疑問が生じます。
後見は認知症になった後の財産を管理する制度ですが、こちらでは後見人(財産管理者)は必要以上に財産が失われないように、最低限の支出にとどめます(裁判所からもそのように要望されます)。
このため、自身に十分な財産があっても最低限の生活費にとどめられる場合が多くなります。
また、後見では投資資産などがあっても、現金化して管理することが多くなります。
例えば、1億円を投資資産に変えておけば、年間数百万円程度の利益になるといわれており、年金と合わせれば、資産を減らすことなく生活することができます。つまり、いわゆる長生きリスクを気にすることなく老後生活を送ることができます。
しかし、後見で投資資産が現金化されていると、1億円を切り崩しながら老後の生活をする必要があります。このため、長生きをすると生活費が足りなくなるというリスクが生じます。
このように、民事信託を利用することで、築いた資産を活かして充実した老後を送ることが可能になります。
事業承継に利用できる
60歳くらいであればまだまだ会社経営に精を出したい年齢ですが、一方でいつ何があるか分からない年齢でもあります。
このため、普段は自身が会社経営を行うようにしておき、認知症になった場合には直ちに後継者に経営が引き継がれるようにしたいところです。
このような場合には、後継者に株式を預けた上で、普段は自身を社長にするように、認知症になった後は後継者を社長にするようにと、財産の使用方法を定めることでスムーズに事業が承継するようにできます。
相談者の希望に即した財産活用が可能
上記はあくまでも一例であり、民事信託契約の定め方によってさまざまなことを実現できます。
つまり、自身が認知症になったり、死亡した後に何らかの希望通りの財産の使用をしてほしい場合には民事信託で実現できます。
認知症や、死亡で自身で財産を管理できなくなった後にも、財産を何らかの方法で活用したいという場合には民事信託の活用をご検討ください。
民事信託を弁護士に相談すべき理由
民事信託の契約書はかなり複雑であるため、専門家による作成が必須です。
また、弁護士と他の士業の違いとして、適切な契約文言を全く新しく作成できるというものがあります。
他の士業や生成AIでは、すでに作成されているひな形に基づいて契約書が作成されるため、依頼者の希望に応じた個別の契約書を作成することはできません。
民事信託のメリットは上記の通り、希望に合致した柔軟な財産管理を委託できることです。決まったひな形では、ひな形に従った財産管理がされるだけであり、希望に合致した財産の管理はできません。
このため、相談者の希望に即した柔軟な財産活用を行うために、お気軽に弁護士にご相談ください。




