- 公開日:2025.11.27
- 最終更新日:2025.12.18
さて、相続が発生して、遺産分割を行う場合、大きく分けると2つの流れがあります。
相続発生 → 遺言書がある場合 原則として、遺言書に沿って相続する
→ 遺言がない場合 相続人間で、遺産分割協書を作成の上、相続する

遺言がある場合
被相続人に遺言書がある場合、原則としてその内容に沿って相続手続きを行います。
たとえば、遺言書を添付することで、銀行口座や不動産の名義変更が可能になります。
しかし、遺言書に形式的な不備があったり、本人が作成したか疑わしい場合には、遺言の効力が認められないことがあります。
また、子どもが3人いるにもかかわらず、1人にすべてを相続させるような遺言がある場合は、遺留分を侵害している可能性があり、その効力が制限されることがあります(遺留分侵害額請求)。
遺言書があっても、作成の真偽や内容に疑問がある場合には、相続の専門家である弁護士にご相談ください。
遺言がない場合
遺言書がない場合は、相続人全員で話し合い、遺産分割協議書を作成するか、家庭裁判所で調停手続きを行う必要があります。
そのうえで、遺産分割協議書や調停調書を添付して、銀行口座や不動産の名義変更を行います。
これらの書類がなければ、名義変更などの相続手続きを進めることはできません。
この場合の遺産分割の流れは次のようになります。
①相続調査 → ②遺産分割協議 → ③遺産分割調停 → ④遺産分割審判
相続調査
遺産分割を行うには、まず相続人の範囲を確定し、どこにどのような遺産があるのかを調べる必要があります。
相続人や遺産に漏れがあると、遺産分割協議が無効になったり、銀行口座や不動産の名義変更ができない場合があります。さらに、不必要な争いを招く原因にもなります。
そのため、知らない相続人がいないか、財産が隠されていないかを事前に調査することが重要です。
しかし、戸籍を収集して相続人やその住所を特定したり、遺産を漏れなく把握するには、専門知識と経験が欠かせません。
このため、たとえ分け方について争いがない場合でも、相続調査は専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。
遺産分割協議
相続調査によって相続人と相続財産が確定したら、話し合いで分け方を決めます(遺産分割協議)。
話し合いがまとまった場合は、その内容にもとづいて遺産分割協議書を作成し、この協議書を使って名義変更などの手続きを行います。
なお、遺産分割協議書に不備があると、名義変更の手続きができないことがあります。
そのため、話し合いの進め方はもちろん、協議書の作成も慎重に行うことが大切です。
遺産分割調停
遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
調停は、調停委員を仲介者として行う交渉であり、全員の合意があって初めて分割方法が決まります。
交渉が成立すると、調停調書が作成され、その調書を添付して名義変更などの相続手続きを行います。
また、調停はその後の審判の準備段階にもあたるため、専門家である弁護士が代理人として関与するケースが多くあります。
遺産分割審判
調停が不成立となった場合は、審判手続きに移行します。
審判は裁判に似た手続きであり、裁判官が双方の主張を聞いたうえで判断を下します。
調停との大きな違いは、当事者の合意ではなく、裁判所が強制的に分割方法を決定する点です。
審判が確定すると審判書が作成され、この書類を添付して名義変更などの相続手続きを行います。
並行進行 訴訟
法定相続人の範囲や相続財産の範囲、遺言の有効性などについて争いがある場合は、訴訟手続に移ることになります。
この訴訟は、これまで説明してきた遺産分割協議や調停の前段階、または並行して行われることもあります。
もっとも、経験上は多少の争いがあっても、調停手続の中で解決することが多く、裁判まで必要になるケースはそれほど多くありません。
遺産分割を行う際には、こうした解決までの全体像を見据えたうえで、最適な方法を検討することが大切です。
「揉めていないから」と相続調査を不十分なまま進めたり、不適切な遺産分割協議書を作成してしまうと、後々余計な手間や争いが生じる恐れがあります。
弁護士にご相談いただければ、これら全体の流れを踏まえて、最適な解決方法をご提案いたします。




