- 公開日:2025.11.22
- 最終更新日:2025.12.18
ご家族がお亡くなりになり相続が発生すると、故人が遺した財産の分け方を相続人同士で話し合う「遺産分割協議」を行う必要があります。
その協議の結果をまとめた書類が「遺産分割協議書」です。
遺産分割協議書があれば、不動産の所有権移転登記や預貯金の名義変更など、相続に関する各種手続きを進めることができます。
逆に言えば、遺産分割協議書がなければ、これらの相続手続きを行うことができません。
しかし、「遺産分割協議書の書き方がわからない」というご相談をいただくことも少なくありません。
そこで本記事では、100件以上の相続相談に携わってきた弁護士が、遺産分割協議書の書き方についてわかりやすく解説いたします。
目次
遺産分割協議書に記載する項目
遺産分割協議書に記載すべき内容は大まかには下記の通りとなっております。
- 被相続人(亡くなった方の、氏名、死亡日、本籍地)
- 相続人(氏名、続柄)
- どの遺産を誰が相続するか
- 後から発見された遺産をどうするか
- 協議が成立した年月日
- 相続人全員の署名と押印(実印)
遺産分割協議書の作成方法
遺産分割協議
遺産分割協議を始める前には、まず相続財産の内容と相続人の範囲を正確に調査する必要があります。
預貯金や不動産などはもちろん、借金などのマイナス財産もしっかりと調査しましょう。
相続人に漏れがあると、せっかく作成した遺産分割協議書が無効となってしまうため、戸籍謄本などを取り寄せて、しっかりと調査を行うことが重要です。
遺産分割協議では、遺産を一覧表(遺産目録)として整理し、どの財産を誰が引き継ぐのかを相続人全員で決めていきます。
作成の手順
遺産分割協議書の作成の手順は、下記のようになっております。
1. 作成する様式
遺産分割協議書には法律上の決まった様式はありません。
しかし、作成の手間や記入漏れを防ぐ観点からも、あらかじめ用意されたひな形を参考にしながら、パソコンなどで作成することをおすすめします。
2. 亡くなられた方の情報を記載
まず、亡くなられた方(被相続人)を特定できる情報を記載します。
記載する場所については遺産分割協議書のひな型を参照してください。
取り寄せた戸籍をもとに、氏名・死亡日・本籍地などを正確に記載しましょう。
なお、日常で使用している文字と戸籍に記載されている文字が異なる場合があります。
(例:「吉」と「𠮷」、「高」と「髙」など)その場合は、「戸籍の方が間違っている」と感じても、必ず戸籍の記載どおりに記入する必要があります。
また、パソコンで変換できない文字がある場合には、いったん印刷した後にボールペンなどで書き加える方法をとりましょう。
3. 誰がどの財産を相続するのかを記載
遺産分割協議書に財産を記載する際は、「1,2,3…」と番号を振って項目ごとに整理していきます。
不動産であれば登記情報のとおりに、預貯金であれば支店名や口座番号などを正確に記載することが必要です。
一般的には「●●が取得する財産」「▲▲が取得する財産」という形で分けて記載することが多く、記載順については特に決まりはありませんが、相続人の年齢順で並べるケースがよく見られます。
また、借金などのマイナスの財産については、プラスの財産の後ろにまとめて記載するのが一般的です。
注意点として、「●●の場合には××が取得する」といった条件付きの記載は避ける必要があります。
このような記載をすると、登記手続きや銀行での預貯金の引き出し手続きができない可能性があるためです。
4. 後から判明した財産の取り扱いを記載
遺産分割が終了した後で、新しい財産が見つかった場合にどうするかを記載します。
一般的には、「当該財産については改めて協議する。」か「新たに見つかった財産は●●が取得する。」という記載にすることが多いです。
5. 署名、押印など
協議が成立した日付を記入したうえで、相続人全員の氏名、本籍地、住所を記入し押印(実印)をします。
これについても、戸籍や住民票の記載通りに正確に記載する必要があります。
気を付けるポイント
ここでは、遺産分割協議書を作成する上でのポイントをまとめました。
①代償分割をする場合の記載方法
不動産など分割が難しい場合には、一人が取得したうえで、不足額を別の相続人に現金で支払う方法(代償分割)で分割することができます。
その場合には、次のような記載をします。
(引用)
相続人●●は、前記遺産の取得の代償として▲▲に対して、××円を支払う。
(引用終わり)
②相続人の中に未成年者などがいる場合
未成年者は十分な判断能力がないと判断されるため、遺産分割協議に参加することができません。このような場合が、保護者(ご両親など)が代わりに遺産分割協議を行います。
しかし、未成年者が相続人になる場合には、同時にご両親も相続人になっていることが多く、保護者と未成年者の間で利益が相反してしまいます。このような場合は、法律上は未成年者を代理して保護者が遺産分割協議を行うことができません。
そこで、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てて、特別代理人が代わりに遺産分割協議に参加することになります。
③不動産については登記事項証明書の通りに記載しましょう
不動産について遺産分割登記を行う場合には、法務局で登記手続きを行う必要があります。
このとき、遺産分割協議書に記載された不動産情報に誤りがあると、登記が受理されないことがあります。
そのため、登記事項証明書に記載されている内容を正確に写すことが重要です。
具体的に記載すべき項目は、以下のとおりです。
| 土地 | 所在、地番、地目、地積 |
| 建物 | 所在、家屋番号、種類、構造、床面積 |
④預貯金は口座番号まで特定できるように記載しましょう
預貯金については、金融機関名だけでなく、支店名・口座の種類(普通・定期など)・口座番号を特定できるように記載する必要があります。
その際には、通帳を確認するのはもちろん、金融機関から残高証明書を取り寄せるなどして、正確な情報を記載するようにしましょう。
遺産分割や遺産分割協議書の作成でお困りの際は弁護士に相談しましょう
せっかく遺産分割協議書を作成しても、不備があると登記や預貯金の名義変更ができなかったり、再度書類を作り直そうとしても他の相続人が協力してくれず、思わぬトラブルに発展してしまうことがあります。
遺産分割や遺産分割協議書の作成でお困りの際は、どうぞ当事務所までお気軽にご相談ください。




