- 公開日:2025.11.05
- 最終更新日:2025.12.04
遺産分割において揉めやすいポイントの一つに、「特別受益」と「寄与分」があります。
この二つは法律上は別の制度ですが、密接に関連しており、遺産分割を進めるうえでしばしば同時に問題となります。
ここでは、その概要をあわせてご紹介します。
特別受益とは
特別受益とは、特定の相続人が被相続人から生前に受けた特別な利益のことをいいます。
わかりやすく言えば、「一人だけ先に相続財産を受け取っていたような状態」です。
例えば、故人から自宅購入資金の援助を受けていたり、多額の金銭を贈与されていた場合、その相続人は実質的に多くの財産を受け取っていることになります。
この状態で法定相続分通りに遺産を分けると、他の相続人に不公平が生じてしまいます。
そこで、生前に受け取った利益を一度相続財産に持ち戻したうえで、改めて遺産分割を行う仕組み――これが特別受益の制度です。
寄与分とは
寄与分とは、特定の相続人が被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした場合に、その貢献分を考慮して相続分を調整する制度です。
わかりやすく言えば、「ある相続人の尽力や負担によって相続財産が増えている状態」を是正する仕組みです。
例えば、故人の介護のために高額な費用を負担した場合や、故人のために不動産を購入していた場合など、その相続人の負担によって相続財産が増加していると考えられます。
このまま法定相続分どおりに分けると、実際に負担をした相続人に不公平が生じてしまいます。
そこで、特別な貢献をした相続人に対し、その負担分を上乗せして相続分を調整する仕組み――これが寄与分の制度です。
特別受益がある場合の計算例
被相続人の遺産が1億円で、相続人が兄弟2人であり、兄だけが生前に2000万円の贈与を受けていた場合、
| みなし遺産 = 遺産:1億円+2000万円(兄の特別受益) | = | 1億2000万円 |
| 兄の相続分:1億2000万円 × 1/2 – 2000万円 | = | 4000万円 |
| 弟の相続分:1億2000万円 × 1/2 | = | 6000万円 |
寄与分がある場合の計算例
被相続人の遺産が1億円で、相続人が兄弟2人であり、兄が家業を手伝って、被相続人の財産形成に2000万円の寄与があった場合、
| みなし遺産 = 遺産:1億円-2000万円(兄の寄与分) | = | 8000万円 |
| 兄の相続分:8000万円 × 1/2 + 2000万円 | = | 6000万円 |
| 弟の相続分:8000万円 × 1/2 | = | 4000万円 |
特別受益や寄与分を考慮した場合の計算方法はやや複雑ですが、基本的な流れは次のとおりです。
- 特別受益や寄与分がなかった場合の遺産額、「みなし遺産額」を計算する
- みなし遺産額を法定相続分に従って分ける
- そこから、特別受益や寄与分の金額を加えたり差し引いたりして、最終的な相続額を算出する
特別受益とみなされる可能性がある事例
特別受益の典型例としては、次のようなものがあります。
- 相続人の1人が、生前に故人から自宅を購入してもらった場合
- 相続人の1人が、生前に故人から自宅の建築資金を援助してもらった場合
- 相続人の1人が、生前に故人から多額の生活費の援助を受けていた場合
実際の事案で特別受益が認められるのかは微妙な判断ですので、納得が出来ない点やご不安な点がある場合、特別受益を巡って、他の相続人と揉めそうな場合は、弁護士にご相談ください。
寄与分とみなされる可能性がある事例
寄与分の典型例としては、次のようなものがあります。
- 被相続人である親の家業に、無償で長年従事していた場合
- 親の介護のために、多額の費用を自己負担していた場合
このようなケースでは、寄与分が認められる可能性があります。
実際に寄与分が認められるかどうかは、事案ごとに判断が分かれる微妙な問題です。
そのため、納得できない点やご不安な点がある場合、また寄与分をめぐって他の相続人と争いになりそうな場合には、早めに弁護士へご相談されることをおすすめします。
なお、寄与分が認められるのは、原則として法定相続人に限られます。
例えば、息子の妻が被相続人の生活費を補填したり、介護を行ったりした場合であっても、残念ながら寄与分を主張することはできません。
特別寄与料の請求期限は、特別寄与者が「相続の開始および相続人を知ったときから6か月以内」、または「相続開始から1年以内」と定められています。
このため、主張を行いたい場合には早期に弁護士に相談した方がよいでしょう。
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